長く入居していると大家さんが替わる事があります。
前の大家さんが亡くなって相続される場合や物件売却のために所有者が替わるいわゆるオーナーチェンジなどです。
そのとき、入居者の方はどうしたらよいのでしょう。
退去を求められたり、家賃の値上を求められたり、新たに契約書を書くために保証人をお願いする必要があるのか心配ですよね。
賃貸契約について法律上では一般法である『民法』と特別法の『借地借家法』で決められています。
一般法と特別法の違いは、おおまかに一般法で決めておいて、個別に必要な場合は特別法で決めます。
民法
■民法 第601条
賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
という物の貸し借り全般について決めています。
賃貸住宅以外にもレンタカーなども対象となります。
民法では契約は契約当事者のあいだで効力があるので、新しい所有者に対して賃借権設定登記をする必要があります。
でも、実際に部屋を借りるときに登記までする人っているのかな?
大家さんの協力も必要なので現実的ではないですよね。
借地借家法
そこで登場するのが借地借家法です。
■借地借家法 第31条 1項
建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる。
登記をしていなくても、引渡し(=鍵を貰って占有できる状態)されたら、所有者が替わっても借り続けることができます。
また、所有者が替わり貸主が変更となっても賃貸借契約は有効のままです。
再契約の必要は無いのですが、新貸主と再契約する事ももちろん可能です。
※前の貸主が競売によって所有者が替わる場合には登記が必要となるようです。
なお、敷金や保証金についても新しい大家さんに引き継がれます。
最高裁判決
■最高裁判決 昭和44年7月17日
「建物賃貸借契約において該建物の所有権移転に伴い賃貸人たる地位に承継があつた場合には、旧賃貸人に差し入れられた敷金は、賃借人の旧賃貸人に対する未払賃料債務があればその弁済としてこれに当然充当され、その限度において敷金返還請求権は消滅し、残額についてのみその権利義務関係が新賃貸人に承継されるものと解すべきである」。
まとめ
いきなり管理会社から所有者変更の連絡が届きビックリされた方もおられるでしょう。
あわてる必要はほとんどありません。上記競売の場合は要注意ですが、その場合にはその旨記載があるはずです。
もし、競売による所有権移転の場合には退去を求めれらる事がありますが、そのまま賃貸運用する場合もあります。
大家さんが替わったタイミングで管理会社さんも替わる事がありますが、その場合には家賃の振込口座や引き落とし口座の変更があるので要注意です。
また、家賃や管理料の更新があるかもしれませんが、別記事『家賃の値上を言われたら』をご覧ください。
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